
残雪期にしか歩けない上越国境の稜線へ
これは2010年4月30日から1泊2日で歩いた、上越国境縦走の記録です。当時撮った写真を見返しながら、15年以上前の記憶を呼び起こして書いています。若い頃の自分がよくこんなルートを歩いたものだと、写真を見るたびに思います。
上越国境とは、群馬県と新潟県の県境に連なる山域で、谷川岳から巻機山にかけて続く稜線のことを指します。この稜線上にある朝日岳(ジャンクションピーク)から巻機山にかけての区間は、夏は登山道が整備されておらず藪が深いため、一般登山者が歩くことはほぼありません。雪が残る残雪期だからこそ歩ける、まさに残雪期ならではのルートです。そのルートを1人でテント泊しながら縦走しました。
歩いたルートは、群馬県側の白毛門登山口駐車場をスタートし、白毛門・朝日岳・大烏帽子山・檜倉山・柄沢山・米子頭山・巻機山と稜線を繋いで、新潟県側の巻機山登山口へ下山するというものです。
雪山装備はピッケル・ワカン・12本爪アイゼンを持参し、歩行中はワカンを使用しました。
初日:白毛門登山口から檜倉山付近のテント場へ
朝6時45分、白毛門登山口をスタート
4月30日の朝、白毛門登山口の駐車場を6時45分頃に出発しました。天気は快晴で、出発時から気持ちの良い青空が広がっていました。

この日の天気は終日晴れで、2日間を通じて天候に恵まれた山行となりました。
写真を見ると、登山口周辺にはほとんど雪がなく、春らしい登山道の様子が写っています。白毛門の登りにかかるあたりまでは、積雪もそれほど多くなく、夏道に近い感覚で歩けたと思います。


白毛門へ向かう途中、笠ヶ岳を経由しました。笠ヶ岳の山頂標識の周囲には雪がなく、地面が露出している状態でした。朝日岳に到達するまでは、全体的に積雪は少な目で、雪と地面が入り混じった状態の登山道を歩いた記憶があります。


笠ヶ岳から先、朝日岳へ向かってよい眺めの中歩きました。


朝日岳(ジャンクションピーク)を越えたら、雪の世界へ
朝日岳(ジャンクションピーク)を過ぎると、一気に雪の量が増えました。そこから先は、ほぼ全行程が雪上歩行となります。ここが上越国境縦走のルートらしい世界の始まりです。

夏には藪に覆われて進むことができないこの稜線も、残雪期は雪がそのまま登山道の代わりとなります。雪をかぶった上越の山々が連なる様子は圧巻で、稜線の先まで白い峰々がどこまでも続いていました。他の登山者と会うことも、先行者のトレースも全くなく、手つかずの雪原を自分だけが踏みしめているという感覚がたまりませんでした。

雪はたっぷりと積もっていましたが、4月末の締まった残雪のため、ワカンで歩くと沈み込みが少なく、意外なほど歩きやすかったです。朝の早い時間帯は特に雪が締まっており、快適に歩を進めることができました。見通しの良い稜線なので、トレースがなくても道迷いの心配はなく、危険箇所も特にありませんでした。


15時30分、檜倉山付近にテントを張る
この日は檜倉山付近で行動を終え、15時30分頃にテントを設営しました。出発から約9時間弱の行動時間です。
雪の上にテントを張るのは、整地の作業が必要で多少手間がかかりますが、平らな雪面を選べばどこでもサイトになるのが雪山テント泊の良いところです。


稜線上のテント場は風が心配でしたが、この日は穏やかな夜で、快適に過ごすことができました。テントの中から外を覗くと、暮れゆく上越の山並みが美しかったのを覚えています。翌日の行程を考えながら早めに就寝しました。
2日目:檜倉山から巻機山を越えて下山
翌朝7時出発、雪煙が覆う稜線の絶景
翌朝は7時頃に出発しました。外に出ると、稜線を雪煙が覆っている風景が目に飛び込んできました。前日の穏やかさとは打って変わって、稜線上を風が流れており、その風に舞う雪煙が朝日を受けて輝いていました。写真に残っていますが、この景色は今でも鮮明に思い出すことができます。雪山ならではの、息をのむような光景でした。


2日目も朝の雪は締まっており、ワカンで気持ちよく歩くことができました。柄沢山、米子頭山と稜線上のピークを次々に越えていきます。雪をかぶった峰々が連なる上越国境の眺めは、どこを切り取っても絵になる景色で、歩みが遅くなってしまうほどでした。


巻機山山頂を経て、新潟側へ下山
米子頭山を越えると、いよいよ巻機山の登りです。巻機山は新潟県南魚沼市にある標高1,967mの山で、上越国境縦走の最終ピークとなります。ピークを踏んだかどうか記憶にないですが、このへんの眺めも素晴らしく、歩いてきた稜線を振り返ると、白い峰々が連なっている様子が一望できました。



巻機山から新潟側へ下山するルートも、しばらくは雪上歩行が続きます。


下りの雪はやや緩み始めていましたが、ワカンを履いたまま問題なく降りることができました。米子沢の堰堤が見えてくると、ようやく下山が近いという感覚になります。

13時30分頃、巻機山登山口に無事下山しました。2日目の行動時間は約6時間30分です。
下山後、新潟の山岳会の方に駅まで乗せてもらった
巻機山登山口からJR六日町駅まで歩いていると、一台の車が止まってくれました。新潟の山岳会の方々で、行き先を聞いてくださり、ありがたいことに六日町駅まで乗せていただきました。重い荷物を背負って車道を歩いていたので、本当に助かりました。山仲間の温かさを感じた瞬間で、今でも感謝しています。
出発地点の白毛門登山口駐車場まで戻る必要があるため、電車で土合駅へ向かい、駐車場へ帰りました。縦走ならではの移動の手間もありましたが、それも含めて良い思い出です。
上越国境縦走の基本情報とルートについて
今回歩いたルートと基本情報を整理しておきます。残雪期の縦走を検討している方の参考になれば幸いです。
歩いたルートと踏んだピーク
スタートは白毛門登山口駐車場(群馬県)、ゴールは巻機山登山口(新潟県)。
踏んだピークは白毛門・笠ヶ岳・朝日岳(ジャンクションピーク)・大烏帽子山・檜倉山・柄沢山・米子頭山・巻機山です。
行動時間
初日は6時45分出発、15時30分テント設営(約8時間45分)。
2日目は7時出発、13時30分下山(約6時間30分)。
2日間の合計行動時間は約15時間です。
残雪期装備について
雪山装備として、ピッケル・ワカン・12本爪アイゼンを持参しました。歩行中はワカンを使用しています。
朝日岳より先はほぼ全行程が雪上歩行となるため、ワカンは必須です。雪が締まっている朝の時間帯に行動することで、ワカンでも沈み込みが少なく快適に歩けました。
注意点
朝日岳から巻機山にかけての上越国境は、夏は登山道が整備されていない藪稜線です。残雪期の限られた時期だけ歩けるルートであり、積雪状況の確認と適切な雪山技術・装備が求められます。
また、今回は2日間を通じてトレースが全くなく、他の登山者にも会いませんでした。見通しの良い稜線なので道迷いのリスクは低いですが、悪天候時は状況が大きく変わります。天気予報をしっかり確認したうえで入山してください。
縦走の場合、スタートとゴールが異なるため、事前の交通手段の確認が必要です。今回のように親切な方に車に乗せてもらえることもありますが、基本的には公共交通機関の利用を計画しておくと安心です。
まとめ
残雪期の上越国境縦走、白毛門登山口から巻機山までの2日間の山行を紹介しました。
朝日岳から先は夏には歩けない藪稜線が、残雪のおかげでどこまでも続く白い稜線へと変わり、雪をまとった上越の山々の連なりを独り占めするような贅沢な体験ができました。

特に2日目の朝に見た、稜線を雪煙が覆う光景は、忘れられない美しさです。

残雪期ならではのルートを静かに歩きたいという方には、ぜひおすすめしたい縦走です。